水産資源の回遊生態（耳石など）
極微小領域の耳石安定同位体比分析技術の応用による魚類回遊履歴の超高解像度解析
今後の持続可能な水産資源の保全に向けて，重要魚類の集団構造や回遊履歴を明らかにすることが適正な資源評価と管理を行う上での課題である．特に，水産資源の宝庫である北西太平洋・海洋混合域においては，数十年変動でおこる資源変動と海洋の鉛直混合をはじめとする大気海洋システムとの関係に不明確な部分が多く，その関連性の解明が期待されている．
一方，炭酸カルシウム（CaCO3）で形成される魚類の耳石は個体の成長にともなって成長輪を付加形成し，さらにその酸素安定同位体比（d18O）は生息環境の温度を反映することが知られている．これらの特徴を利用すると生態や回遊履歴の推定が可能となる．しかし，これまでの分析技術では「高解像度」「高精度」を両立する分析は困難であった．
本研究では従来法と比べて1/100のサンプル量で高精度分析が可能な微小領域安定同位体比分析システム（MICAL3c）を活用して，（１）耳石に記録された環境履歴解析の時間解像度を，従来法に比べて10倍以上向上させる手法を確立・最適化を実践し，最終的に（２）得られた生息環境情報を魚類回遊モデルおよび大気海洋モデルにフィードバックすることで，海洋混合プロセスと関連する資源変動解析の信頼性を向上させることを目的とする．
